アベノミクスは私たちの暮らしを豊かにしたのか?
こんにちは。モデレートです。
今週末の7/21(日)は参院選ですね。みなさん選挙には必ず行きましょう。
さて、
「アベノミクス」や「三本の矢」、「異次元緩和」などといった言葉を聞いたことがあるでしょうか。
どれも安倍政権の経済政策を指す言葉で、アベノミクスの柱が三本の矢であり、そのうち第一の矢が異次元緩和と呼ばれる政策でした。
安倍首相は、アベノミクスの成功、不況状態の脱却を主張しますが、政権樹立から6年半経った今、それらはどのような成果をあげたのでしょうか。そして、私たちの生活にどのように影響を与えたのでしょうか。
結論から言うと、アベノミクスは不況脱却に貢献できておらず、むしろ私たちの暮らしぶりは悪化しています。
ここでは経済指標を見て、いくつかのグラフを用いながら、経済状況の変化を追っていきたいと思います。
目次
(1)賃金の変化
(2)消費の落ち込み
(3)雇用について
(4)最後に…
(1)賃金の変化
私たちの生活水準を測る手っ取り早い方法の一つは、賃金の変化を見ることでしょう。
賃金を表す指数として、名目賃金指数と実質賃金指数の二つがあります。
どちらも基準年を100と設定し、その年の賃金の水準を表しています。
二つの違いとして、名目賃金指数は賃金そのものを表しますが、実質賃金指数は賃金と物価(商品の価格)の関係を表したものだということが挙げられます。
例えば、同じ1000円を持っていたとします。
この時、リンゴが一つ200円ならば
1000÷200=5
より、5つ買えるわけです。
しかし、リンゴ一つ250円に値上がりした場合
1000÷250=4
1000円では、リンゴは4つしか買えません。
つまり、賃金それ自体が上がっても物価がそれ以上に上昇すれば、実質的な賃金は減ることになります。これを表したのが実質賃金指数です。
さて、これを踏まえて賃金水準の変化を見ていきましょう。
(ニッポンの数字 名目賃金 https://www.nippon-num.com/economy/nominal-income.html
実質賃金 https://www.nippon-num.com/economy/actual-income.html
上が名目賃金、下が実質賃金の前年比伸び率です。
灰色のゾーンはマイナスとなっており、ここに突入すると前年比で数字が下がっていることになります。
これを見ると、比較的最近まで名目賃金が上がり続けていた一方で、殆どの時点において実質賃金は下落していたことが分かります。
つまりこれは、賃金の上昇が物価の上り幅に追いついておらず、人々の暮らしぶりが悪くなっていることを示しています。
さらに、名目賃金でさえグラフの右端ではマイナスゾーンに突入しています。
下記の記事では、名目賃金と実質賃金がともに、5か月連続で減少していることが伝えられています。
https://this.kiji.is/521106608119202913?c=39550187727945729
どうやら、アベノミクスは賃金水準を上昇させているわけではなく、この6年半の間、ほぼ悪化の一途を辿っていると言えそうです。
(2)消費の落ち込み
(1)で触れたように、賃金水準は次第に減少していますが、それが暮らしに影響していることが示せるデータはあるのでしょうか。
消費者動向指数という統計がそれを示しています。これは家計の消費額を指数化したもので、単純に家計がどの程度、商品やサービスを消費したかということを表しています。
当然ながら、賃金水準が下がれば消費も落ち込むことになりますが、一体消費者動向指数はどのように変化しているのでしょう。
(総務省https://www.stat.go.jp/data/cti/index2.html#gaiyouのデータを基に作成)
上グラフは2002年から2018年までの実質世帯消費動向指数の推移を表したものですが(2015年を基準年として100とおく)、残念ながらほぼ一貫して下落しており、家計消費の面からみても、到底好景気とは言えないような状況が続いています。
さらに言えば、安倍政権樹立後の2013年から急激な下落が始まっている事が見て取れます。
物価の上昇に賃金水準が伴わず、各家庭のお財布事情が冷え込んでしまっているのです。
ここで少し話は変わりますが、自民党が消費税増税を目論んでいることは、皆さんご存知だと思います。
しかし、このタイミングでの増税は愚策だという事が、上に挙げた指標から分かります。
まず、消費税増税はその分だけ物価を上昇させますから、名目賃金さえも下がっている今、更なる実質賃金の低下を招いて人々の暮らしを苦しくします。
こう書くと、何だか机上の話にも思えますが、「人々」の中には僕も、この記事を読んでくださっている方の殆ども含まれるでしょう。
また、これに伴って消費は当然落ち込みますから、実質世帯消費動向も下落します。
これでは経済が回らない上、消費はGDP(=消費+投資+政府支出+純輸出)の多くを占めるため、GDPの成長率も停滞するでしょう。
安倍首相ら閣僚は、「リーマン級の不況がない限り増税延期はない」と言っていますが、増税が不況のトリガーとなり得る以上、これは全くナンセンスな見解です。
ですが参院選で自民党が勝利を収めれば、プラン通り増税は実行されるでしょう。
「自民党支持だけど増税反対」という意見も見受けられますが、残念ながら彼らにそれは通じません。
政権交代の起こり得ない参議院選挙です。我々の生活に直結する問題である以上、増税反対ならば野党に票を投じるという選択も必要だと思います。
(3)雇用について
次の動画をご覧ください。
下記は先日行われた党首討論の動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=Afgioap_eIA
この動画の、1:28:30~をご覧ください。金融緩和政策の成果について答える形で、安倍首相が意見を述べています。
この中で安倍首相は、アベノミクスの成果として「雇用の改善」を繰り返し強調しています。
(総務省を基に作成)
これは、2009年からの就業者数の推移を表したものですが、確かにグラフは右上がりになっています。
しかし、実は就業者数が上昇している年齢階層を見ると、その傾向は安倍政権発足以前から始まっており、減少している階層もまた民主党政権の時代から減りつつあるのです。
つまり、減少群と上昇群の減少・増加ペースが逆転した時期がアベノミクスと重なったにすぎず、決して就業者数の増加はアベノミクスの成果ではないのです。
この話は下の方のブログで詳しく分析されています。
こちらも、ぜひ読んでみてください。
↓↓↓
アベノミクスの「成果」を示すデータ集 - モノシリンの3分でまとめるモノシリ話
(4)最後に…
実質賃金や消費動向など、その数値は私たち家計のお財布事情が冷え込んでいることを示し、これを見て決して好況などとは言えません。
さらに、安倍首相が強調する「雇用の増加」も、政権発足以前のトレンドを引き継いでいるだけで、特にアベノミクスの成果というわけではありません。
つまり、残念ながらアベノミクスによって日本は不況を脱したとはいえず、むしろ国民の暮らしを悪化させています。
「悪夢の民主党政権」と繰り返す安倍首相ですが、それは政権としてアピールできるものがないことの裏返しであると言えます。
現在、野党各党は落ち込んだ賃金水準を回復させ、経済を活性化させるため、アベノミクスに代わる経済政策を打ち出しています。
今度の参議院選挙、「選択肢がないから自民党」ではなく、安倍政権での6年半、そして野党の掲げる政策を踏まえ、自分たちの暮らしを良くしてくれる政党に投票することを考えてみてください。